流れていくのは困惑する民の表情。蜂起するにしても、しないにしても変わらない憂い顔に不安が募る。

 きっとうまくやってくれる。そう信じていても、それは祈りに過ぎないことを痛感した。

 町にも既に硝煙が下りて来ている。城に近付くにつれ濃厚さを増すそれに、私は眉を顰めた。

 近隣の森に馬を置き去り、そそくさと歩むマリーの後を追う。立ち込める埃が不安を掻き立てる。私は散らばった血痕から目を逸らすことで精一杯だった。

 彼女だけを見つめ、足元の死体を視界から外す。死に際の情景が私に「怖いだろ?」と囁いている気がした。

 獰猛な雄叫びに身を潜め、秘密裏に作られた地下通路を歩む。石造りの路には足音が反響していた。

 一言も話さない彼女に話し掛けようと逡巡し、口を開けては閉じる。まるで魚のようで滑稽だと自嘲していれば「地上に出ます」と一言告げられた。