「ねぇ、マリ―は……」

「舌を噛みますよ」

「でも……」

「飛ばします」

 馬の背に乗り走る。彼女の腰に腕を回せば、ただの細腰で、間諜だなんて未だに信じられなかった。

 それでも口を開けば、冷淡といなされる様に嘘ではないと確信する。

 全てが偽りだったことを知ると、黙って付いてきて良かったのだろうか、と迷いが生じる。選択の余地が無かったとはいえ、己の浅はかさに羞恥を感じた。