幕開けの合図を私は聞いていない。楚々とした背を見送ったのが、夜明け前の話だ。

 大丈夫? そう問い掛けようとしてやめた。戦うのは彼らだ。私が不安を煽ってどうする。

 だから笑った。莞爾として笑い、彼らに手を振ったのだ。

 勝利の女神は微笑むものらしい。だから不安な心根を隠し、ただ笑った。

 瞼に口付けを落とすフィン。頬に唇を寄せるユアン。額にリップ音を響かせるベルナール。私の唇に自らの口唇を近づけ、口端に軽く口付けたヴィンス。

 挨拶にしては異様な光景に、ロビンは頬を染め、ベルナールはそんな彼女の旋毛に口付けを落とし、頬を引っ叩かれていた。