「どういう意味?」

「そのままだよ。僕も君も想いを断ち切るべきだと思ってね」

「お前がレイニー様を好きなことと、俺がレイニー様を好きなことは関係ないだろ!?」

「静かに。関係あるよ」

「ない!」

「それを告げればエレアノーラ様が苦しむと思わないの? 君と彼女の間にあるのは主従関係。その均衡が崩れた時。君達は一緒に居られなくなる」

「そんなこと……」

「分からないって言える? それにね僕達と彼女じゃ身分違いだ。貴族には貴族か王族がお似合いだよ。
 幸いヴィンス様はエレアノーラ様を愛している。愛されることが女性の悦びだと僕は思うけどね」

「じゃあ……じゃあ俺の想いはどうすれば……!?」

「そんなの自分で考えなよ」

 僕の言葉に息を詰める彼。言い過ぎたな、と内省しつつ、そんなのは僕が知りたいと嘆いた。

 幸せになって欲しいとの願いは少しでもヴィンス様に届いただろうか。自身のような後悔はして欲しくないと背を押してみたが不安で仕様がない。

 二人の間に暫しの沈黙が訪れる。心許ないと見守っていれば、ヴィンス様が意を決したように彼女に向き直った。