彼女の恋人になりたい、とか、夢見る少女のようなことを思っていたわけではない。それでも幸せになる姿を見届けられたなら。僕は、そんな淡い願いは抱えていた。



 誕生日には祝いの花束を。

 結婚式には彼女の名前の由来でもある睡蓮を飾りたい。

 子供が産まれた暁には誕生花を。花言葉を添えて贈るのもいいだろう。

 亡くなる際は手ずから育てた彼岸花で見送ろう、とまで。



 何一つ叶わなかった。何一つ叶えられなかった。

 彼岸花のような猩々緋に沈む彼女を抱き上げることすら赦されない僕は、今後何を想って生きていけばいいのだろう。
 僕の涙が彼女の頬を伝う。牡丹の花は、そうして零れてしまった。

 国のトップになったのは僕の父。しかし〝その後〟のことを考えていなかった彼の所為で国は崩壊の一途を辿り、シュプギーは幕を閉じた。