人波に揉まれながら傍らに寄り添えば、彼女は既に虫の息。

 僕を侵したのは黒闇にも似た罪悪感で、嗚咽に混じって零れた想いは告白になってはくれなかった。

 浅い呼吸を携える暗い瞳に光を探す。手を握るも反応は無く、呼びかけても意味など無かった。

 殺す必要はあったのか。そう問われたなら僕は否と答える。彼女は何も知らなかったし、生きていたところで何も出来なかった。

 けれど何も出来なくとも、生きていれば幸せになれたかもしれない。花さえあれば笑顔になれる女の子だったのだから。