「俺には何も分からないよ。分からないけど情報は開示するべきだと思ってね。
 ベルだけがレイニーのことを知っていて、レイニーがベルのことを知らないのは不公平でしょ?」

「そういうものかしら?」

「俺にとってはね」

 ベルナールが彼女を寄越してきた意味が分かるような気がした。これでは否が応でも信用してしまう。

 スパイには向かないほどの真っ直ぐな心。それは彼女の弱点でもあるし、武器でもある。

 ここまで育てたということは、もう手離す気はないのだろう。そんな彼女を私に預けたのは、相当、危機が迫っているからかもしれない。

 当然だ。私達は常に目隠しをしながら綱渡りをしているようなもの。首に縄が括られているのだから、一歩、足の置き場を間違えれば暗黒に真っ逆さま。二度と光のもとへ戻ってくることはない。

 ふとフィンは大丈夫だろうかと身を案じた。次、会える保障などどこにもない。分かっていた筈なのに、今更、身が震える。

 私はあの頃から何も変わっていない。そう思うと悔しさで押し潰されてしまいそうだった。