「意味は御座いません。暇そうにしていらしゃったので、暇潰し程度にはなるかと思っただけです」

「質問を変えるわ。お前は誰の味方なの?」

「……と、申しますと?」

「コレを私に渡す。それも何故〝今〟なのか。お前には考えがあった筈よ。
 こんな些末な嫌がらせなら、今迄だってする機会はあった。それなのに、しなかった意味はなにかしら? わざわざ仲間を募る〝民の声〟を載せたコレを貴族の私に渡す意味。フィンは私に何を見せたいと思ったの? それとも試験のつもり?」

「感服致しました」

「正直に話しなさい。そうしないとお父様に告げるわ」

「勿論です。では俺からも一つ。アンタは誰ですか?」

「またそれなの? ふざけてるなら……」

「これがふざけている人間の顔に見えますか?」

 彼の言葉にグッと押し黙る。騒ぐ心を落ち着かせようと紅茶を傾ければ、身体に染みわたっていくのが分かった。