*

「とてもいい判断ね」

「恐れ入ります。ですが、やりすぎでは?」

「私を誰だと思って? 悪しき令嬢としてあのくらい何でもないわ。
 それに、あそこまでやれば二度と顔を合わせたいとも思わないでしょう? 詮索されるのは本意じゃないしね。
 もう敬語はいらないわよ」

「そこまで考えて……だけどやっぱりやりすぎだよ」

「ふふっ、メイドの叫び声聞いた? 笑っちゃうわね。〝あの泥棒猫!〟ですってよ? 今時、泥棒猫なんて言わないわよね? それに私を猫で例えるなら、もっと気品のあるものにして欲しいわ。それこそ……」

「もういいよ。演技はそこまでで……」

「あら、言い逃れしないのね?」

「レイニーを騙せるなんて思ってないよ。それに、あのまま退室したのは俺の為だよね」

「思い上がりよ。早く屋敷に戻りたかっただけだわ。……と、言いたいところだけど、女の子(レディ)を、そんな格好のまま立たせる訳にはいかないもの」

 濡れたシャツが胸元に密着している。透けているのは晒。胸部は僅かに丸びを帯び、とても〝男〟の身体には見えなかった。