「カタリーナ様」

「はじめて名前で呼んでくださったわね。なにかしら?」

「貴女は母国を憂うことはあるのかしら?」

「私は、いつも民を思っていますわ。私の家族ですもの」

「そう」

 やはり、この姫は阿呆だ。憂うことが民を救うことではないのに、恥ずかし気もなく微笑出来るのは、相当、頭が軽いからに違いない。

「ねぇ、エレアノーラ様は何に怒ってらっしゃるの?」

「え?」

「私に何を見ているの?」

「何を仰ってるのかよく分からないわ」

「貴女はずっと怒ってばかりいるわ。可愛らしい顔を鬼のように歪ませて。
 はじめは強引に誘ったから怒ってらっしゃるのかと思っていたの。でもエレアノーラ様は私を見ていないわ。だから、何かを重ねているのかと……見当違いだったらごめんなさいね」