「そのようなつもりは毛頭御座いません」

「嘘仰い! この新聞は貴族が目を通すようなものではないわ! ゴシップ記者が喜んで認めて、下賤の民が舌なめずりしながら読むものよ! それに……」

「それに、なんですか?」

 レジスタンスのことを伝えるか否か迷った。私が、ただの令嬢なら口にするべきだったのだろう。今迄の私なら確実に揶揄して嗤っていた。なのに開いた唇から、肝心の言葉が零れることはない。

 そんな行動に以前の甘い己を感じ、嫌気が差した。自分を殺した人間すら恨むことを知らない清廉な私を。自らの保身より、見ず知らずの誰かの命を惜しむ私を。

 悔しい。悔しい。音にはせずとも心が零れる。

 我儘放題をしても、清く生きても、満たされない。ならば私が此処に在る意味とは何だろう? 今迄の私なら分かったのだろうか。それとも以前の私なら理解出来たのだろうか。それすらも分からず、私は背もたれに頭を投げやった。

「フィン、お前が私にコレを渡した意味を答えなさい」