「どうかしら? 男を騙す嘘なら常套句よ」

「それなら私は女だから該当しませんわね」

「何が言いたいの?」

「私は貴女と仲良くなりたいだけよ。お友達になりたいの」

 反吐が出る。皆が皆、手を繋いで仲良く出来るなどと本気で信じているのだろうか。

 きっと彼女は疑いもしない。〝誰とでも仲良くなれる〟と。だからこそ腹立だしかった。

 かつての自身が、そうであったからこそ惨めさを突き付けられているかのようで耐え難い。手折ることのできない花が煩わしく思えた。

 民から見た私はこうだったのだろうか。確かに殺したくなるかもしれない、と腹の底にストンと落ちた。



 ――姫でしかない。



 この意味が今更ながら理解出来たような気がする。