「どうして知っていて黙っていた」

「言う必要性を感じなかっただけだよ。僕はレジスタンスの味方でも、王家の味方でもない。ヴィンス様の味方だから」

「いつから、そんなに忠義溢れる臣下になったんだよ」

「初めからだよ。僕は彼に仕えると決めた時、迷ったらヴィンス様を道標にすると決めたんだ」

「……俺だって……」

「へぇ、君がそこまでエレアノーラ様に骨抜きにされてたなんてね」

「俺だって誓いを立てた。裏切るわけがないだろ」

「あの誓いを立てたんだ。彼女は悪の貴族の娘だよ? いつ裏切るかなんて分からないじゃないか」

「あの人は裏切らない」

「君が彼女を裏切るから?」

 僕の言葉に彼が柳眉を寄せる。真ん中で分けられた髪のせいで眉間の皺がありありと見えた。