伝えてもいいだろうか。振られることは分かりきっている。この人が〝ただの護衛係〟に恋をするなど有り得ない。

 所詮、俺に許されるのは誓いの口付けのみ。愛を交わすことは出来ないのだ。想いの強さが運命の赤い糸を繋ぐというのなら、きっと俺が選ばれるのに。

 永遠に叶うことのない夢物語を想う。999本の薔薇を貴女に贈りたい、なんて戯言を。

 苦しい。苦しい。全てを吐き出してしまいたい。けれども、それと同時に呑み込んでしまいたいとも思う。食べ物と一緒に消化されてしまえばいいのに、と。

「レイニー様……」

 象った名が宙を舞う。透き通った言葉に胸を痛めながら、俺は仮面を繕ったのだった。