「ピンクの睡蓮の花言葉は〝信頼〟私には程遠い言葉ね。だからこれは該当しないの。
 この〝桜色〟が示すのは単純にネリネのこと。ネリネはピンク色の花だから」

「ネリネって?」

「彼岸花に似た形の花よ。花言葉は〝また会う日を楽しみに〟〝忍耐〟〝箱入り娘〟ネリネが似合うと言いながら、その二つを示唆することを記している。つまり彼が言いたいことは――」

「〝また会える日を楽しみに〟つまり、また会おうってこと?」

「私はそう思ったわ。けれど、待ち合わせ場所がどこにも書いてないのよ。折角、次の手紙を待っていたのに残念だわ」

「また、そう言って監視の目を盗むつもりでは?」

「もう、あんなことはしないわ。次はフィンに捕まえて欲しいと思ってるくらいだもの」

 歯の浮くような台詞に胸がざわつく。こんなことで〝頼られている〟と考える己に嘲笑が漏れた。歓喜を覚える単純な自身が腹立だしくて仕方ない。