ユアンは姉を亡くしている。病弱だが優しい人で、王子の俺をも区別しない素敵な人だった。

 清らかで、嫋やかで、艶やかで、色褪せた記憶の中でも彼女は素晴らしい。意思を灯した瞳なんて、今のレイニーのようだ。

 けれど彼女は俺が十五の時に亡くなった。弱かった心臓を侵され、人生にピリオドを打ったのだ。

 彼は姉が好きだった。だからこそだろう。彼女が亡くなってからは、暫く目も当てられない程落ち込んでいた。

 それは枯れた花のようで、項垂れた身体が指し示すものは悲哀に他ならない。

 しかし、俺はこれで良いとも思っていた。何故なら彼は、きっと姉を〝女〟として愛していたから。

 二人の関係が、どうなっていたかは知らない。けれども近親相姦は荊の路。それ以外に未来はない。

 だからこそ俺は、彼女が二度と戻ってこないことに安堵した。

 これでユアンは惑わされなくて済む、と。

 俺の考えは恐らく当たっていた。先程のユアンの言葉が何よりの証拠だ。直接聞かずとも分かりきっている。

 姉を愛するなんて禁断以外の何物でもない。