「笑ったからよ」

「笑っていたのか?」

「ええ。だから馬鹿な私は自分の選択が正しかったと思い込んでいた。
 確かに少女は花に一時、癒されたのかもしれないわ。けれど、それは〝一瞬〟であって何も解決しない。空腹が満たされたりはしないのよ。花は所詮、空腹な人間にとって〝戯れ〟にもならない」

「確かにな」

「裏を返せば、腹が満たされた人間にとっては〝戯れ〟になるということよ」

「ならば花で良いではないか」

「分かってらっしゃるくせに、そんなこと言わないでくださる?」

「成る程ね。保管が出来て、貴族が持っていても怪しまれない。更には永遠に価値の変わらない資産」

「ええ。石油、金、宝石。これらは戦争を起こせるほどの付加価値を備えている。言うなれば万国共通で、みーんな喉から手が出る程欲しいモノというわけ」

「さすが悪女」

「褒め言葉ね。他国の人間にとって、他国の争いなど些末な事象に過ぎないわ。飛び火が来なければいいと思っているだけ」

 前世で王族が出した早馬は意味を為さなかった。レジスタンスが根回しをしていたからではない。〝勝者〟に取り入るつもりだったからだ。

 つまり協定を結ぶ国においてトップなど誰でも構わないということ。勝者こそが王座に就くべき、とでも言うのだろうか。