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「このドレスは嫌いよ」

「色が可愛くないわ」

「舞踏会なら一番いいものを身に付けていかなくちゃ」

「庭はもっと豪華にして」

「料理が不味いわ」

「こんな安いお茶を出すなんて私を馬鹿にしているのかしら?」

「本当にクズね」

「貧しい者は心も貧しいのね。お可哀想」

 したいことを、していった。したことだけを、していった。けれど得たものは――

「飽きましたわ……」

 凄まじい虚無感と疲労。そして向けられる悪意である。豪華なものは見た目だけで、すぐに飽きてしまうし、食事だって高いものがいいとは限らなかった。