*

「フィン、お手洗いに行ってくるわ」

「はい。お気を付けて」

 ホールに彼を置き去りにし地下室へ向かう。地下室のどこに行けばいいのかは分からないが問題はないだろう。〝シュプギー〟は私に会いたがっているのだ。きっと向こうから会いに来てくれる。

 使用人の目を潜り抜けながら地下室への階段を探す。事前にワインセラーの場所を聞いていたので迷いなく向かうことができた。

 深夜というせいもあるのだろう。薄暗い廊下は気味悪く、地下室は当然人の気配など無い。

 足音は一つだけ。それが孤独であることを顕著に表し余計に恐怖を感じた。