髪を切られた。大事に大事に伸ばしてきた黒髪が視界の端でハラハラと揺れる。ゴミへと変わり果てた漆黒は床の上に散乱していた。

「どうしてですの……」

 囁いた言葉は獣のような怒号に掻き消される。向けられた殺意が私を貫いていた。

 粗暴な手に腕を掴まれる。懸命に逃れれば、幾重にも重なった悪意が行く手を阻んだ。

「いや、いやよ……私は死にたくない……皆さん勘違いなさってるわ……私、なにもしてなくてよ……?」

「ああ、お前は何もしなかった。だから俺達レジスタンスが動いたんだ」

「どうしてですの……? 私、皆さんに恨まれるようなことはしていませんわ。きっと、お話すれば分かる筈です……」

「貴女には永遠に分からないでしょう。姫は、この国を案じたことはありますか?」

「私は、いつでも民を思い、国を憂いています……!」

「やはり貴女は姫でしかない。それでも悪には変わりないのです」

「意味が分かりませんわ……」

 この世で一番安全だった筈の城で窮地に立たされる。剣を構える男達が私を取り囲み、先陣を切っていた男が私に言葉をぶつけてきた。