「…生贄になれ、と……」

ようやく口にした言葉はかすれて自分の声とは思えなかった。

「そう、申されるのですね…」


龍神は無言のまま竜己を見つめる。

それが肯定の意に感じられた。

かつて、今まで龍神に生贄を奉じた話は聞いたことはなかった。

何の見返りも求めず、彼は国と王族を護り続けた。

では、何のために…?


『護りたいものが、あるのでしょう?』

心を読み取ったかのように囁く言葉。

「…貴方も、護りたいものがあるのですね」

感情を現さない表情が少し和やかに崩れた気がした。