「この滝に棲む…龍神様ですね」

 肉体を持たない精神体である自分の姿を見聞きできる人物。

 交流の中で知識を与え、水源豊かなこの土地を開墾し栄えるにしたがって、小さいながらの国に発展していく。

 人々から龍神だと貴き尊敬の念をもらった。

 そして気付く。

 この国を護ってきた龍貴。

 それは、今の自分自身がその存在であるということ。

 幼い頃から歴史については知識を教え込まれていた…龍貴の意思によって。

 国の発展や施策についての王の相談にも、神託のように助言を行う。

 先を見通す力がある訳ではない。

 総て知っているのだ。

 歴史を変えないように、細心の注意を払いながらずっと見守ってきた。

 永遠とも思える程の長い時間の中で、少しずつ力を蓄えた。

 この国を護る力を手に入れるために。

 豊かな自然と交流し、人々の純粋な想いを我が力とした。

 ずっと時間をかけて準備していた。

 気の遠くなるほどの時の中で、共に過ごした者が誕生し、自身である竜己、そして鳳珠。

 時折訪れた空虚な時間も、その存在が心を満たしてくれた。


 そして、約束の日は訪れる。

 総ては今、この時のために。

 自分自身を受け止める。