深く澄んだ青い瞳に見つめられ、身動きが取れない。

龍神の存在など信じていなかったのだ、今まで。

目に見える力こそ総てだと。

しかし、目前に実在している青年が、その信念を覆そうとしている。

見せつけられた現象を否定することは難しい。

ざわめいた不安顔の部下や兵士を見て、敗北を悟った。

領土の街を引き合いに出され、家族を残してきた兵士達の士気は乱れているのが見て取れる。

ここで龍神や王を切り捨て戦っても、不安にかられた兵士と怒りを抱えた民との勝負は
泥沼で何の得にもならないのは目に見えている。

滅びを選ぶわけにはいかない。

「龍神が人を脅すのか」

「戦で民の命を犠牲にしようとした貴方と、違いはありません。それに私は神ではありませんよ」

「では何なんだ」

「この国を、命をかけても護りたいと願った、人ですよ」

「『人』、か」

「そう。人ですよ」