「……龍神は現れんようだな」

固唾を飲んで静まり返った周囲に、

嘲笑を含んだ敵将の言葉が響く。


城下で事の成り行きを見守っている民たちも動揺を押し隠せない。

神官様が、竜己様がと、名を口にしながら嘆きの言葉を紡ぎだす。

龍神に祈りを捧げる者から、龍神に怒りをぶつける者へと変わっていく。


「神官はいなくなった。次は誰が生贄になる?」

喜々として声を挙げる敵将に立ち上がろうとした鳳珠を抑え込み、

自ら前に出ようとした蓮雅王だったが。


―――ドーーン・・・

地響きが伝わるような雷音が突然鳴り響いた。

にわかに黒い雲に覆われていく空に皆、不安を隠し切れずに仰ぎ見る。