鳳珠は父王の陰で事の成り行きを見守っている。

民に危害を与えないためにと王城に案内された彼らは、

降伏し支配権を明け渡すと信じて疑っていない。


「ではまず、…王よ。お前が皆の盾となって龍神を呼び出してみよ」

敵将の言葉に周囲からどよめきが起こる。

平然と一歩前に踏み出した王の蓮雅に、勝ち誇った笑みを向ける。

鳳珠は周囲を見渡したが、龍神の姿はどこにも見えない。


「お待ちください」

凛とした響きの声が王の足を踏みとどめる。


「何者だ?」

「龍神の神殿に仕える、神官です」

誰何する言葉に進み出たのは竜己だ。

神官としての正装である真っ白な衣装を着込んだ彼の姿は、

見るものに清浄さを感じさせるほど神秘的に見せる。


「龍神の姿を見、声を聞くのが神官の務め、

 龍神のために盾になるのは私の役目です」

躊躇いもない堂々とした姿に敵将の方が気圧されている。