顔に触れようとした手は、スルリと竜己の頭を素通りした。

実体を持たない身体。

『竜己、自分を…私を信じて、飛び込めばいい』

目前に見える自分と同じ瞳が力強い意志を表す。


手を延ばし、抱きしめるように傍に寄り添う龍神の気配に触れ、

不思議と心が穏やかになっていった。


幼い頃に病がちだった父が亡くなった。

触れることが出来なくても呼べば現れ、聞けば答えてくれる。

ずっと見守り、自分以上に自分をのことを理解してくれる龍神は、

もはや竜己にとって父親以上の存在だった。



一滴の涙が頬を伝い、落ちて散った。