「龍貴様」

小さく名前を呼ぶ。

近くで彼の気配がする。

「…鳳珠を、よろしくお願いします」

顔を上げた先に龍神の姿が見えた。

彼にとっても彼女は特別な存在だと信じたい。

出来ることなら今すぐ、どこか遠くへ連れて行ってくれと願いたい。

でもそれは彼女自身が許さないだろう。


だから。


後を追うという彼女を引き留め、敵将の手に落ちないようにと願う。

「貴方の眼には、どんな未来が見えているのでしょうか?」

『私は未来が見える訳ではない…知っていただけです』

龍貴が近づいてきて、手を延ばす。

『これから先のことは何も。竜己、貴方の眼と同じです』