「今、私に出来ることは、龍貴様を信じることだけ、か」

そして思い出す。


昨夜、初めて見たと思った龍貴の微笑。

しかしもっとずっと前に一度、目にしたことがあるのを思い出した。

『無事に産まれました、女の…姫様です』

報告と共に見に行った部屋で。


産まれたばかりの鳳珠の姿を見て、微笑を浮かべていた龍貴を見た。

彼がそこにいると気付いていたのは、龍神の眼を持つ自分だけだったのだろう。

直後、視線が合った龍貴はそのまま姿を消した。

『鳳珠』この名前も龍貴が名付けたと聞く。

龍神の眼を持つ私を『竜己』と名付けたように。


神殿で祈る彼女の側に佇む姿も幾度と目撃した。

笑みは浮かべていなくても、巫女の彼女を見守る瞳は優しげに見えた。