どれ程の時が経ったのか。

いつの間にか眠りについていた竜己が目を覚ます。

まだ夜は明けていないらしく、辺りは薄暗い。

隣には彼女が安らかな寝息を立てて眠っていた。

顔にかかった長い髪をすくい、後ろに流してやる。

ずっとこのまま眺めていられたら…叶うはずのない願いを浮かべ、苦笑する。


眠る彼女を室に残し、神殿奥にある湧水の滝へと足を運ぶ。

毎朝、泉で身を清めるのが日課だった。

徐々に空が明るくなるにつれ、冴えきった空気が温かいものに変わっていく。

飛び散る飛沫が朝の陽光を反射して煌めく。

冷たい泉水に身体を浸らせて、気を引き締める。


もっと自分に力があったなら。

強く願わずにはいられない。

見える眼だけではなく特別な力がもっとあれば、

国を護ることが出来たかもしれないのに。


龍神のように。