後継の皇子が生まれ、安心したものの、

王家に再び強い龍神の力をと望む家臣も少なくない。

そこに鳳珠への想いが知られたら…王家の血を濃く継ぐ御子を望む声が多くなり、

新たな争いが起こる可能性が想像できる。

後継者の政権争いに巻き込まれ、王の心労を増やす事態は不本意だった。


この想いを表に出さなければ大丈夫だ、と。

しかし。

抱きしめた腕は彼女の暖かな躰を放すことができなかった。

そして、彼女も、彼の腕から離れようとはしなかった。


それは、どんなに隠そうとしていても、

ほんの一瞬の瞳が交わるたびに伝わってしまう

お互いの心を、ずっと感じていたからだ。