国の安寧を願うのは彼女のため。

どうか、彼女が幸せでありますように、と。


幼い頃から見守り続けてきた彼女は、

成長していくと共に竜己の心を騒がせた。

決して表に出さないと誓ったのはいつの日だったか。


現王の蓮雅とは祖父を同じとする従兄弟。

先代王の妹である母と父を早くに亡くし、

蓮雅を年の離れた兄と慕って育ってきたのだ。

姫を授かったものの、世継ぎに恵まれなかった王の元に

待望の皇子が生を受けたのは今から10年程前。

その頃はもしもの時のためと、王族のひとりである竜己が

次期王位継承者として筆頭に挙げられていた時期があった。