現王の娘である鳳珠(ホウジュ)も竜己ほどではないにしろ、

龍神の姿を見、声を聴く能力を受け継ぎ、

巫女として神殿に仕える役割を果たしている。


姿の見えない竜己を探して人の気配が途絶えた神殿を訪れて、

偶然聞いてしまった彼らの会話。


どうしても黙って聞き流せなかった理由が彼女にはあった。

駆け寄ってきた彼女は竜己の胸に飛び込み、小さな拳を握りしめていた。


溢れた涙は頬を伝い、攻める言葉は涙声となってかすれる。

「竜己様ひとりを犠牲になんて……!」

激しい言葉を吐く彼女を、竜己は抱きすくめた。