七月の初め。
あと一週間と少しで待ちに待った夏休み。
私は立石凪。この市立桜宮高校の二年生。
今はちょうど朝のホームルーム前の自由時間なんだけど、
「ねえ、なぎ。今日転校生来んの知ってる?」
そう、朝からこの話題でもちきり。
あ、この子は白井咲子。あだ名は【さっち】
運動よし、勉強よし、スタイルよしの才色兼備。
「んーん、知らない。それほんと?」
「うん、さっき職員室に行った時に知らない子いたし。」
「へぇー…」
ここで、ふと疑問に思ったことを口にする。
「じゃあさ、なんでその子がこのクラスに来るって知ってるの?」
「……。」
ーいや咲子さん、ここで黙ったらそれはもう罪を認めたことになっちゃってますよぉ…ー
「さっちが聞いたんだ。」
「うん。」
そこへ、先生が入ってきた。
「よし!みんな席につけ!転校生を紹介するぞ」
その言葉に、みんなが反応する。
「え、どんな子だろう」「かっこいいかな?」
ざわめく教室。
招き入れられた転校生は、教壇に立ち先生と何か話しをしている。
「じゃあ自己紹介してもらうぞー」
「…藤宮将輝です。バスケが得意です。よろしく。」
先生と入れ替わり前に出た転校生の彼は、短くそういうと、
ふっと笑った。
「何今の笑顔!」「ちょーかっこよくない?」
彼の笑顔にクラスの女子たちはキャーキャーと騒ぎ、
男子は悔しそうに歯ぎしりをする。
「よし、じゃあ藤宮の席はあそこな。」
あそこと指さすのは、私の隣の席。
…え?私の隣?
藤宮くんはスタスタと歩いてくると席につく。
「きみ、隣?名前なんてーの?」
「えっ…と、立石凪です。よろしく…」
しどろもどろになって返すと、彼はぱっと表情を明るくして、
「へぇ、"なぎ"ってんだ。可愛いね。俺のことは"まさき"で
いいから。よろしく、なぎ!」
ーニコッ♡ー
彼の印象が一瞬で変わった。
クールだと思っていた彼は、すごく明るくて人懐っこく笑う。
「ねえなぎ。メアド交換しない?」
「いいよ。」
私は鞄からケータイを取り出し、振り返る。

退屈な毎日に、きみの色が彩やかに溶けて混ざっていく。