しかし、何を言っているのかさっぱりわからない。手話を教えてもらったが、簡単なあいさつしかわからないからだ。

蓮は、親指と人差し指で眉間をつまむようにし、指を伸ばして前に出した。『ごめんなさい』だ。

「美桜ちゃん、ごめん。全然わからないや」

「えっ?あっ、そっか。ごめん!」

美桜も『ごめんなさい』と手話でしたあと、意味を教えてくれた。

「英語のテストがんばってね!あなたは絶対にできるって言ったの」

その言葉に蓮の顔が一気に真っ赤に染まる。体温が高くなり、鼓動も一瞬で早くなった気がした。

「これで『英語』って意味なの?」

蓮は美桜がさっきしていたように、右の人差し指と中指をあごの下につけ、あごに沿って右に動かした。

「そうだよ。『イギリス』っていう意味もあるよ」

「そうなの?」

「手話は、一つの単語に一つの意味じゃないの。一つの単語に複数の意味があるんだよ」

「へぇ〜。英語の単語を覚えるより簡単そうだね」