椿と一緒にいても何も感じない。大切な人に変わりはない。しかし、美桜に対して想う気持ちとは何もかも違っていた。

「蓮!聞いてる?」

少し怒った口調で椿が言う。蓮は「ごめん」と笑ってごまかした。



追試の日は午前中は晴れていたのに、午後から急に雨が降り始めた。

ホームルームが終わり、蓮が追試をする教室へ向かっていると、「蓮くん!」と後ろから声をかけられた。その声に蓮の緊張が少しほぐれた。

「何?」

笑顔で振り向くと、美桜が顔を赤くしながら手話をする。『がんばれ』だ。

「えっと……たしか……」

小さく呟きながら、美桜は手話を続ける。