蓮の姿を見た瞬間、美桜は嬉しさで胸がいっぱいになる。

椿と空は、リレーに夢中で蓮に気づいていない。蓮は、二人に見つかりたくなかったからか小声で美桜に話しかけていた。

「新しい歌ができたんだ。誰よりも最初に美桜ちゃんに聴いてほしい」

蓮のまっすぐな目を見て、ダメと断る人はいないと美桜は思った。

二人は運動場から少し離れ、日陰になる大きな木の下に立った。

「じゃあ、歌うね」

「楽しみだよ!蓮くんの歌、久しぶりだな」

蓮が息を吸い歌い出す。ピアノはもちろんないので、アカペラだ。


怖がる必要なんてない
だって僕は知っているから
君ががんばっていることなんて
太陽が照らしていく
僕らの希望と願い
未来につながる


蓮が歌い終わった直後に、ダンスの人は集まってくださいという放送が鳴り響いた。