「僕のお母さんはピアノの先生をしていて、僕にピアノを教えてくれた。近所にシンガーソングライターを目指してる人がいて、その人から作詞のしかたを教えてもらったんだ」

蓮の顔が嬉しそうになる。しかし、すぐに辛そうな表情に変わった。

「友達に『そんな趣味ダサい』って言われてすごく傷ついて、それから人に隠すようになったんだ。……ないしょで作ってるんだけどね」

「……私に、言ってもいいの?」

美桜はおそるおそる訊ねた。

「美桜ちゃんは特別!」

蓮の笑顔に美桜は顔を赤くした。心臓の鼓動が、また激しくなった気がする。

「それに辛そうだったから……。少しでも楽しんでもらえたらいいな」

蓮はそう言ってピアノを弾き始めた。優しい音が響く。