「加藤蓮です。出身中学校は北野中学校です。がんばりたいことは部活です。……好きなことはーーー」

蓮は少し考えたあと、口を開いた。

「好きなことは、読書です」

パチパチと拍手が起こる。

蓮が席に着いた時の表情を見て、美桜の胸がドクンと鳴る。その顔は寂しげで、後ろめたそうだ。

「木下、次だぞ」

林先生とクラスメートの視線が刺さる。

「はっ、はい!」

美桜は立ち上がり、話す。

「木下美桜です。三月の終わりにこの街に引っ越してきました。がんばりたいことは…友達を作ることです。好きなことはーーー」

言いかけて口が止まる。体が嘘をつくことを拒んでいるようだった。みんなの視線がどんどん突き刺さる。

「………好きなことは……買い物に出かけることです………」

パチパチと拍手が起こる。しかし、嬉しさを感じることはなかった。後ろめたさだけが残る。

その後も順調に自己紹介は進み、終わった。