four seasons〜僕らの日々〜

美桜は慌ててお礼を言った。

「いえいえ」

男の子は優しく微笑んだあと、真面目な顔になり美桜をじっと見つめた。美桜も男の子を見つめた。

「あの……えっと……」

男の子は顔を真っ赤にしながら、口をパクパク動かした。

「どうしたんですか？」

美桜は驚いて訊ねた。しかし、鼓動は高鳴っていく。

「その……名前……」

男の子が言いかけたその時、「れ〜ん！」と美桜の後ろの方から大きな声が響いた。

美桜が振り向くと、そこにはショートパンツを履いた女の子とイヤホンで音楽を聴いている男の子がいた。

「置いてくよ〜！早く来て！」

女の子が笑顔で言う。

「ごめん！あの二人と約束があって、もう行かないと…」

男の子は申し訳なさそうに言った。

「いえいえ。助けてくれて本当にありがとうございます」

美桜は少し残念な気持ちを覚えながら言う。

男の子は二人のもとへ歩いていく直前、小さな声で呟いた。

「もしも、高校生で花宮高校に入学するのなら……」

えっ？

美桜は耳を疑った。しかし、すぐに男の子の姿は人に埋もれて消えてしまった。