〜蓮の思い〜

美桜ちゃんは、あんなにひどいことを言ったのに、何事もなかったかのように接してくれた。

水族館に一緒に行けて、幸せだった。途中で帰ることになった時、おとぎ話のシンデレラを思い出した。十二時の鐘が鳴り、魔法が解け、現実が夢へと戻っていくーーー。

翔くんが変なことをしないか心配になるが、バイトも大事なので美桜ちゃんに帰ることを告げ、駅まで急ぐ。

クリスマスだからか普段よりも街にはカップルが多い。その楽しげな顔を見ていると、美桜ちゃんや椿ちゃんに対する罪悪感でいっぱいになる。

いつだって僕は最低だった。椿ちゃんのことを好きではないのに、付き合った。美桜ちゃんに椿ちゃんや他の女子には見せない優しさを見せた。……二人を傷つけた。

二人の辛さに気づけなかった。あの時ーーー宮野さんが遠くに行ってしまう前に見せた寂しさに気づけなかった時と何も変わっていない。

マイナス思考に囚われそうになり、慌てて椿ちゃんが言ってくれた言葉を思い出す。

白い息を吐きながら、カフェへと急いだ。