four seasons〜僕らの日々〜

「このチョコ、とってもかわいい!」

「これはちょっと作るの難しそ〜」

雑誌やお菓子作りの本を広げ、グループを作って話している。

男子も女子に見つからないようにこっそり話していた。

「今年こそは、十個以上もらいたいぜ!」

「お前は無理だって〜」

「蓮とか、松井はいっぱいもらいそうだし、いいよなぁ。モテる男は……」

二月十四日はバレンタイン。好きな男子に女子がチョコをあげる日。

クラスメートたちがチョコの話をしても、翔の心は何も動かない。冷え切ったままだ。

美桜からチョコはもらえないと翔は思っていた。義理でももらえないだろう。美桜の嫌がることをしてしまったのだ。嫌われていたっておかしくはない。

「……いや、もう嫌われてるよな」

美桜から話しかけてこないのがその証だと翔は思った。

気を緩めると、また泣いてしまいそうになり慌てて堪える。チョコの話で盛り上がる教室から逃げようと、翔は廊下に出た。

すると、胸が久しぶりに高鳴った。廊下で美桜が椿と話していた。

翔は美桜のそばにいていいのか迷ったが、美桜は翔に背中を向けていて、翔に気づいていない。

翔は窓の外を見るふりをして、美桜と椿の会話に耳をすました。いけないことだとわかってはいたが、気持ちを押さえることができなかった。