翔の目に、涙がにじむ。自分じゃだめなんだと気づかれた瞬間だった。

「蓮くん、ありがとう」

「ううん。…美桜ちゃんが、元気になってくれてよかったよ!」

すぐそばにいる翔のことなど最初から存在しないかのように、美桜と蓮は幸せそうに、嬉しそうに笑っている。

まるで、美桜がおすすめだと言った本の表紙の男女のような表情で、二人は見つめ合っている。

翔は黙って図書室を出た。そして、旧校舎に向かって走る。

五限目、六限目の授業を翔はサボった。ずっと一人で泣いていた。

涙は止むことがなく、永遠のように流れ続けた。



翔は美桜とクラスが違うことを、初めてよかったと思った。

図書室で美桜を泣かせてしまった日から、翔は美桜を避けている。美桜も翔に話しかけてくることはなかった。そのことに安心している気持ちもあれば、悲しいと思う気持ちもあり、翔は複雑な思いを抱えて学校や家で過ごしていた。

二月になると、クラスだけでなく、他のクラスでも女子はある話で盛り上がるようになった。