「……クリスマス、お正月があるな」

翔が美桜にささやくと、美桜の顔がますます赤くなる。その小さい体が小刻みに震えた。

「大丈夫か?」

翔がその肩に触れる。美桜の口から「ひゃっ!」という悲鳴がもれた。

「…ダメ!ダメだよ!私は……」

美桜は目の前に立つ翔の体を両手で押し、首を横に振って抵抗した。

「それでも、俺はお前が好きだ……」

美桜に拒まれると、心にまた苦いものが現れる。それを感じるたびに、翔は強引になっていっているような気がした。

「……美桜……」

自分の手でそっと美桜の頰に触れる。柔らかい感触と、温もりを感じた。

「翔くん!だめ……」

懸命に逃れようとする美桜の耳に翔はそっと顔を近づけ、ささやいた。

「美桜は春が好きなんだろう?でも俺は冬が好きなんだ。……寒ければ、こうやってくっつけるからな」

翔は美桜の手を包んだ。そして顔を近づけたその時、翔は不意に何者かに突き飛ばされ、美桜から引き離される。

「……何してるの?」

そこにいたのは蓮だった。今まで見たことがないほど激しく怒っている。

その蓮の背後に美桜が隠れ、体を震わせている。泣いているのだと翔は気づいた。それを見て翔は苦しくなっていく。今まで美桜を泣かせたことはなかった。それなのに、今、目の前で美桜が泣いているーーー。