「えっ?う〜ん……。迷うなぁ」

美桜は考えながら言う。

「夏はアイスがおいしいし、花火とかお祭りとか楽しいよね。かわいい浴衣も着れるし!風鈴の音もすてきだよね〜」

「……海やプールも楽しいしな」

水着姿の美桜を一瞬想像し、変態じゃないかと自分で思いながら翔も美桜と一緒に話し始めた。

「秋は紅葉がきれいだよね」

「読書や芸術の秋だな」

「あと、食欲の秋!私の家ではよくさつまいもを使ってお菓子を作ったりするよ」

「へえ、何を作るんだ?」

「スイートポテトとかクッキーとか作るよ」

「……おいしそうだな」

楽しそうにお菓子を作る美桜の姿が、翔の頭の中に浮かぶ。

「うん!とってもおいしいよ」

美桜は無邪気な笑顔を翔に向けた。

「冬は……」

美桜が言いかけて、止める。顔を赤くして翔を見つめた。クリスマスの日のことを思い出したのかもしれない。

翔はニヤリと笑い、美桜の方に体を近く。美桜は顔を赤くしながら、後ずさった。しかし本棚に背中がぶつかる。美桜は逃げようにも逃げられない。それが翔の理性を奪いそうになった。

図書室には美桜と翔しかいない、というわけではなかった。一人の男子生徒が椅子に座って本を読んでいた。しかし、読書に集中しているのかこちらを見向きもしない。