「空、悪いが二人で話したい。ちょっとどこかへ行ってくれ」

翔に空は「わかった」と言い、美桜と椿のところへと行った。

「……話って?」

蓮が警戒しながら翔を見つめる。翔はニヤリと笑いながら、蓮の耳に口を近づけた。

「……あの日、クリスマスに遊びに行った日に、……俺は美桜に告白した」

「え……」

蓮の顔が驚き、足が止まった。そのすぐ後ろを歩いていた生徒が迷惑そうな顔を見せ、通り過ぎていく。

呆然とする蓮に、翔は話し続けた。

「一緒に初詣も行った。着物を着ていたぞ。とても……きれいだった」

蓮の表情がさらに固まる。

「美桜は俺が幸せにする。俺はお前のように誰にでも優しくはない。……本当に好きなやつにだけ、優しくする。そうすれば美桜は絶対に傷つかない。……俺が攫う」

固まったままの蓮を置いて、翔は再び歩き出した。その足や心はとても軽い。

……恋は、まるでお菓子みたいだ。

そう翔は思った。

ケーキ、マカロン、ドーナツ……。そんな甘いものを食べた時のように、好きな人のそばにいると、幸せで満たされる。生クリームのように甘ったるい気持ちでいっぱいになる。

初めて恋をした時には全く感じなかったことまで、美桜に対して翔は感じていた。

「……俺の初恋は、お前かもしれない」

美桜にこっそりささやくと、美桜の顔が赤くなる。その表情を見て、また翔の胸に甘く優しい鼓動が鳴った。

冬休みが終わった今日と明日は学校が終わるのが早い。それが少し翔は寂しかった。

「……放課後、時間あるか?」

いまだに顔を赤くしている美桜に、翔は訊ねる。

「よかったら、図書室に一緒に来てくれないか?……美桜のおすすめの本が知りたい」

「あっ、放課後はダメだよ〜」

美桜ではなく、椿が答えた。

「昨日蓮から『音楽室に来て』って言われたんだ。だから行けないよ」