美桜は翔を見つめた。

「俺は小さい頃に触ったことがある。ゴムみたいな感触だった」

「そうなんだ〜」

美桜の目が輝く。

翔の頭の中に小さい頃の思い出が映る。生きていたお母さんと一緒に水族館に行った時の記憶。楽しくてまるで今日のように時間を忘れた。

「……ありがとう」

美桜を見つめている翔の口から、自然とこぼれた言葉だった。

「えっ?」

美桜は首を傾げる。その顔もかわいくて、翔の胸が高鳴った。



「わあ…!クリスマスツリーきれいだね!」

美桜が翔に言う。翔も微笑みながら頷いた。

隣街から自分たちの住む街に帰ってきた頃には、空は暗くなっていた。しかし、街は明かりに包まれ、イルミネーションがあちこちで輝いている。待ち合わせた場所にあったクリスマスツリーもライトアップされ、歩く人も足を止めている。

美桜と翔も足を止め、並んで黙ってツリーを見つめた。

翔が横を見ると、美桜の顔が明るく照らされてまぶしいくらいきれいだ。胸の高鳴りが止まらない。翔が口を開いた。

「……好きだ」

「……え?」

美桜が驚いて翔の方を見る。翔は顔を赤くしながらもう一度言った。

「俺は、ずっと美桜が好きだ」

美桜は翔から目をそらし、「ありがとう、嬉しい。でも……」と小さく呟く。