「全然大丈夫だよ。私の方こそ、今日は突然付き合わせちゃってごめんね」

「そんなことないよ!むしろ、嬉しかったし楽しかった!本当にありがとう」

「私も楽しかった。ありがとう」

美桜は少し残念そうな顔で微笑む。蓮は何度も「ありがとう」と言いながら、帰っていった。

蓮がいなくなったことに、翔は心の底から嬉しく思った。

「美桜、何か見に行きたいところはあるか?どこでもいいぞ」

翔は美桜に笑いかける。

「たしか二時からイルカショーがあるよね?それ行きたいな〜」

美桜も笑って言った。

しかし、翔は気づいている。美桜が自分に向ける笑顔と、蓮に向ける笑顔は違うということを。自分に向けられる笑顔は、美桜が友達に向ける笑顔だ。そして、蓮のはーーー。

翔は胸が苦しくなってきたので、考えることをやめた。



午後からは、翔にとって本当に幸せだった。美桜と二人きりでまるでカップルのように周りから見てもらえる。それが嬉しかった。

「この魚、国語の先生に似てない?」

「じゃあその隣にいるのは理科の先生だな」

そんなことを言って笑ったり、お土産を買ったり、時間が早く流れていく。

「……そろそろ時間だ。行こう」

「うん」

美桜が嬉しそうに笑う。美桜が楽しみにしていたイルカショーの時間だ。

大きくジャンプをしたり、水の中で回転するイルカを見てはしゃぐ美桜に、翔は何度も見とれてしまった。

「イルカに触ったことはあるか?」

イルカを一生懸命見つめる美桜に、翔は訊ねた。

「ないよ。でも、一回でいいから触ってみたいなぁ」