「わあ…!かわいい!」
美桜が水槽の中を泳ぐカワウソを見ながら言った。美桜の顔に笑顔が現れる。
翔たちは隣街の水族館にいる。水族館の中は家族連れやカップルで賑わっている。
「ほんとだ!かわいいね」
蓮も美桜のように笑った。その顔を見て翔の胸にまた苛立ちが生まれる。
水族館に来るまでに乗った電車の中でも、道を歩いている時でも、蓮は美桜と楽しそうに話していた。まるで、あの時『関わらない』と蓮が言ったことが嘘のように、美桜は楽しそうにしている。
美桜が笑ってくれるのは嬉しい。しかし、翔の蓮に対する苛立ちなどは大きくなっていくばかりだ。
「あっ!赤ちゃんかな?小さいね〜」
美桜が翔に笑いかける。その笑顔に少し心が癒された。
水槽を見れば、たしかに小さいカワウソが一生懸命泳いでいる。
「……秋に生まれたらしい。ここに書いてある」
翔が水槽の横に貼られた説明書きを指差す。説明書きには、生まれたばかりの時の写真もついていた。
「うわ〜。今よりずっと小さい…!」
じっと写真を見つめる美桜を翔は微笑みながら見つめた。


