少しほこりの積もったピアノの鍵盤に翔は指を置く。美桜の歌声のような高い音が静かな空間に響いた。そしてピアノの鍵盤に次々と指を置いていく。高い音、低い音、様々な高さの音が部屋中に響く。
「……この部屋にピアノの音がするの、久しぶりだね」
音楽室のドアが開き、椿が遠い昔を思い出すかのように目を細める。翔はピアノに触れるのをやめた。音はあっという間に部屋から消えていく。
「……そうだな」
「蓮の作った歌を、美桜が歌う時がたまにあったよ。だから文化祭で歌えたんだ」
椿が泣きそうな顔で言う。文化祭の時のことを思い出しているのだろう。
「アカペラで美桜と歌った時もあったな。私も美桜もボカロが好きで、お互いのおすすめの曲とか教えあって、蓮も知っているボカロの歌を歌って……」
椿の目から涙がこぼれる。
「俺もよく聞いていた。というか、聞こえてきた。……いい歌だと思った」
翔もさっきの椿と同じように目を細める。
「俺はあいつが歌わなくなろうが、どうだっていいと思っている。でも、美桜が今苦しんでいる。傷ついている。……あいつはお前と別れても、美桜を傷つけるんだな」
翔がそう冷たく言うと、椿の体が震えているのがわかった。その震えが恐怖ではないことに翔はすぐに気づいた。
「あいつは矛盾している。『関わらない』と言ったのなら、俺が美桜とどうなろうが関係ないはずだ。なのに俺に美桜のことを聞いてくる。本当にバカだな、あいつは」
「……この部屋にピアノの音がするの、久しぶりだね」
音楽室のドアが開き、椿が遠い昔を思い出すかのように目を細める。翔はピアノに触れるのをやめた。音はあっという間に部屋から消えていく。
「……そうだな」
「蓮の作った歌を、美桜が歌う時がたまにあったよ。だから文化祭で歌えたんだ」
椿が泣きそうな顔で言う。文化祭の時のことを思い出しているのだろう。
「アカペラで美桜と歌った時もあったな。私も美桜もボカロが好きで、お互いのおすすめの曲とか教えあって、蓮も知っているボカロの歌を歌って……」
椿の目から涙がこぼれる。
「俺もよく聞いていた。というか、聞こえてきた。……いい歌だと思った」
翔もさっきの椿と同じように目を細める。
「俺はあいつが歌わなくなろうが、どうだっていいと思っている。でも、美桜が今苦しんでいる。傷ついている。……あいつはお前と別れても、美桜を傷つけるんだな」
翔がそう冷たく言うと、椿の体が震えているのがわかった。その震えが恐怖ではないことに翔はすぐに気づいた。
「あいつは矛盾している。『関わらない』と言ったのなら、俺が美桜とどうなろうが関係ないはずだ。なのに俺に美桜のことを聞いてくる。本当にバカだな、あいつは」


