ぐるぐると回想に浸りながら着替えを済ませて、一階にあるリビングへと階段を降りる。

「……おはよう」

無理やり笑顔を作るが、沈んだ心での声は暗かった。

「おはよう、美桜」

朝ごはんを食べているお父さんとお母さんが言った。

「冷めないうちに美桜も食べなさい。お姉ちゃんと買い物に行くんでしょ?」

少し嬉しそうにお母さんが言った。

美桜は三月の終わりごろにこの街に引っ越してきた。しかし引っ越してきてから美桜は家にこもったまま、外に出ることがなかった。今日初めて引っ越して来てから外に出る。

「美桜。この近くにはおしゃれなお店がいっぱいあるから、きっと気に入ったお店が見つかると思うよ」

お父さんがコーヒーを一口飲んで言った。

「うん」

美桜は少し安心したような両親の顔を見ながら、サラダのレタスを食べた。